銀杏ララバイ


そう言いながらかおるは、
同じ空間にいる鳶人を見て微笑んでいる。

そして鳶人も、とても良い笑顔をかおるに向けた。



「そうか。鳶人も19歳だからしっかり役に立っているんだな。

これからも頼むぞ、鳶人。」


「はい。ずっとお姉ちゃんと赤ちゃんとここを守ります。

お兄ちゃん、皆のために素敵な宿を作って下さいね。」


「ああ、任せろ。
今年で社会に出て4年目だが、いろいろな仕事の仕方は見てきた。

僕にとっても、ここは戻る場所だから
100年でも200年でも対応できる建物を造る。

実家が依頼主となれば責任者は僕になる。

あーあ、腕がなるなあ。」



孝史は数ヵ月後に迫っている建て増し工事で頭がいっぱいのようだ。

まだかおるには言っていないが、
孝史もいずれはこの近くに事務所を構えて暮らしたいと思っていた。





そして数ヵ月後、

臨月に入ったかおるは、
宿の仕事は、新しく雇った三人の女性に任せて出産準備に入り、

孝史と鳶人の見守る中で、
可愛らしい男の子を出産した。

本来ならば初めての出産、
とても心細い思いになっているだろうが… 

かおるは全て医者を信頼し、
孝史と鳶人の存在があるだけで、

新しい生命の誕生に… 
最高の幸せを感じていた。





「わあ、こいつ、すごく可愛いなあ。

ちょっと小さいけど、天使みたいだ。
目の感じが鳶人に似ている。

おい、鳶人、お前の甥だから可愛がらないと駄目だぞ。」



初めてかおるの子供を見た孝史、

頭に浮かんだ事を口にして目を細めて喜んでいる。


そう、この赤ん坊を見た孝史には、
父親の存在など完全に消えていた。

たとえその場に父親がいたとしても、
目にも意識にも入っていなかっただろう。