「母上、向こうの暮らしはいかがです。」
「まあまあじゃ。いや、なかなか興味深い。」
それから数年後、
場所はまた鶴岡八幡宮の、
今度は本殿の屋根の上。
2羽の鳶が、
辛うじて顔を出している月明かりの下で、
見ようによっては鎌倉時代の衣装を身につけた貴人に見える格好で話をしている。
「それは上々。
私も気持ちの良い日々を過ごしています。
この間は銀杏丸が会いに来てくれました。
と言っても、私も同じ所にいますからいつもの事です。
あの子は11歳になりました。
どうやらまた力が生じているようですが、
それを封じる手立ても覚えているようです。
相変わらず、あの孝史の後を追いかけています。
まあ、孝史も如才なく相手をしていますから、
あの子にとっては敬愛の兄と言うところでしょうか。
我々の愛とは異なるようですが、
正直なところ、
あの子がいまだ孝史に甘えるように接している事が解せません。
とにかく良い居場所を見つけたものです。
ただし、あのかおると言う娘は勘が鋭いと言うか、
何となく気が抜けません。
しかし銀杏丸は絶対的な信頼と愛情を感じているようです。」
「まるで嫉妬深い女子のようだな。
お前も仲間に入ればよいではないか。
誰も阻むものはおらぬぞ。」
「まさか。
私は母上の庇護の下で育ったのですよ。
猫可愛がりされたり、そっぽを向かれたり…
兄上が母上より妻を愛した事に嫉妬、
兄上がご病気になられたらいきなり11歳の私に将軍職を押し付けた。
そして兄上がご回復された後は修善寺へ押し込め、
その挙句に兄上は暗殺された。
そして私は将軍職の実権など無いままに、
人形のように操られる生活。
その間母上は兄上の死に対する懺悔からか、
兄の子・公暁を盲目的に可愛がり、
私は27歳でその公卿に暗殺されましたよ。」
と、歴史上、知られている話をしている。
どこまでが真実か…

