「かおるは慎重だな。
私は君が思っているとおり鳶人の中にいる。
だからいつも一緒だ。
礼と言うのは、
私の自由を守ってくれた事だ。
いくら決まりでも、
私はあんなものを背負って毎日学校へ行くのは御免だ。
かおるのお陰で私の自由は守られた。
家でいろいろな勉強はする。
はっきりと自分の言葉で礼が言いたかった。
鳶人の言葉ではまだうまく言えない。
私は約束する。
私はかおるが生ある内はかおるを守る。
きっとかおるはここを気に入って、
ここで一生を終えるだろう。
私も同じだ。忘れないでくれ。」
そう言ったかと思うとギナマの姿は薄くなり、
だんだんと消えて行く。
「ギナマ… 」
慌ててギナマの名前を呼んだが…
いくら目を凝らしてもギナマの姿は消えていた。
玄関の戸も閉まっていた。
それからかおるは教科書を持って部屋へ戻った。
アレは夢かも知れないが、
ギナマがここにいるのは確かだ。
かおるは自分の肌で感じていた。
かおるはそっと、2人が眠っている部屋を覗いた。
天使のように無防備に、
天真爛漫な顔をして眠っている
2人の弟を眺めている。
この鳶人の実態が何なのか、そんな事は関係ない。
母が死んで、養護施設に入れられ…
抜け出した二人を助けてくれたのはあのギナマだ。
父を見つけてくれたのもギナマだ。
あの実鳶という人は信じられない事を話していたが、
その真意などは構わない。
たとえギナマが、
この鳶人がどんな生い立ちをしていても構わない。
今は私と孝史の弟で、
それを覆す事は誰にも出来ないのだ。
かおるはそんな事を思いながらそっと障子を閉めた。

