銀杏ララバイ


そこに立っているのはまさしくあのギナマ。


昨年の3月、鶴岡八幡宮の境内で、

野宿やむなしの自分たちを10日間休ませてくれ、

それから父の行方を教えてくれたギナマ。

鳶人が彼の生まれ変わりと信じていたかおる、

にわかには事態が把握できなかった。


鳶人は孝史と一緒に眠っているはずだ。

かなり前にお休みを言いに来た。


そしてここにいるのは、
5歳の鳶人ではなく16歳のギナマだ。

一体どう言う事なのだろう。



「ギナマ、今までどこにいたの。
アレから1年以上経つのよ。

あなたが父の居場所を教えてくれたから、

私たち今はとても幸せなの。
あなたもここで暮らす。

あなたなら歓迎よ。
父さんに話せば絶対に大丈夫。」



鳶人とギナマの関係がはっきりしないが、

自分を見つめるギナマの涼しげな眼差し、
とても優しい区、温かい。

かおるは、胸の中がとても温かくなっているのを感じながらギナマを見ている。



「いや、私は自分の言葉でかおるに礼が言いたくて、こうして来た。」


「礼… 私何かしたかしら。
私たちがお礼を言いたいぐらいよ。

それに私、あなたが無事で嬉しいわ。あなたが消えて… 」



かおるは、ギナマが消えて鳶人が現われた、
と言おうとして言葉を飲み込んだ。


鳶人は赤ん坊の時からここで育っていたのだ。

やはりそれではつじつまが合わない。

そんな事を口には出来ない。

かおるは黙ってギナマを見つめるだけだった。