銀杏ララバイ


が、孝史の気迫はすごかった。

かおるの様子を見れば、
自分しかいないと言う事は一目同然だ。

勉強よりスポーツ好き少年を自負している以上、

ここで鷲などに負けてはいられない。

鳶人は自分が守る。
と言う意思の力で鷲の動きを捕らえて石を投げ込んでいる。

命中はしなくても鷲の動きを鈍らす作用はある。



「孝史、偉いぞ。よく頑張った。

これからは父さんに任せろ。
うちの子供たちを襲うとは不届きな鷲だ。」



いつの間に来たのか、声のする方を見れば、

父が弓矢を構えて鷲を狙っている。

そして、信じられない事に、

父は数本の矢を立て続けに射て、
その一本は鷲の足の付け根の辺りに刺さった。



「やった。あいつ逃げて行くぞ。」



鷲が逃げるように飛び去ったのを見て、

孝史は鳶人を抱いて父の側に駆け寄った。

かおるも後に続いたが… 
矢を射た時の父の雰囲気が、

あまりにも昔の武士のように感じられ、
安心もし、嬉しかったが、何故か戸惑いを覚えた。


確かに目の前にいる父はイチョウ屋の半纏を着ているいつもの父。

かおるは、今までは記憶が無いと言うことで、

父を何となく気弱な人格に感じていた。

しかし今の父は勇敢で頼り甲斐のある、

まさに背中に弓矢を携えた鎌倉武士。

まるで別人のように感じられた。

いや… あの実鳶がそこにいるようだった。