「そうじゃあなくて…
元々その借金は父が借りたものではないのだから…
私たちはここで幸せに暮らしたいだけなのです。
私たちが幸せに生きていれば、
死んだ母も安心してくれると思います。」
「わかった。賢明な言葉だ。
かおる、君のその気持ちはとても尊い。
鳶人はその孝史を心から慕っている。
これからも仲良く暮らしてくれる事を望んでいる。頼むぞ。」
そう言ったかと思う間に実鳶の姿は消え、後には正宗が、
しかし、孝史が起きそうな素振をした時には、
その刀さえ消えていた。
「お姉ちゃん、僕どうしちゃったんだろう。
いきなり眠くなって…
あの二人の決闘、どうなった。
あれって何だったんだ。」
孝史を誘ったのは自分だから今さら隠し事は止めよう、と、
かおるは大方のところは話した。
「本当にあれは実鳶と言う人と北条政子だったのか。
僕が見た本でもあれは実朝だったけど…
だけど母と子なのに変だね。
あ、そうか、実朝ではなくて鳶人の父親だった実鳶。
その人も既に自害しているから魂だけの存在なのだね。
だから政子の怨霊とも戦っていた。
でも変だね。
政子はどうして怨霊になって実朝の子孫や他の関係者たちの霊までも集めたいんだろう。」
「そんな事は分からないけど…
多分成仏したくないのよ。
現世をしっかりと自分の目で見ていたいんじゃあない。
とにかく私は実鳶さんに父さんの事を頼んでおいたわ。
どんな風になるか分からないけど…
私たちが幸せに暮らせるという事が鳶人の幸せにもなるのだから、
きっと何とかしてくれるわよ。
私はそう信じている。」
孝史にだからこそ話せるが、他の人には、
たとえ父にでも絶対に話せないと思いながら、
かおるは実鳶の言葉を信じた。
いや、信じたいと思った。

