「新入生はこちらへ!」
校内に入ると名前も知らない先生達が誘導をしている。
先生の指示に従い移動する新入生の波に身を委ねる僕。
クラス表が張り出されている玄関で自分の名前を探す。
ふと、横のベンチで本を読む一人の女の子が目につく。
吸い込まれるように見惚れてしまう。
これがまだ名前も知らない君との出会い。
栗色の髪の毛。
透き通るような白い肌。
咲き乱れる桜と同じピンク色の唇。
この時から始まったのかな?
僕のカウントダウン。
目を逸らす事が出来ずにいる僕。
『………これが一目惚れか……』
「何一人で言ってんだ?」
突然声をかけられ驚き振り向くとそこには見慣れた顔がある。
「空〜おはよ〜」
こいつは中学からの友達、椿。
『椿か、はよ』
「何してたんだよ?」
『いや、あそこのベンチの子見てたんだよ。可愛くない?』
「えっ!?どれどれ?」
俺の肩越しにベンチを見る椿。
「……誰もいないじゃん」
『あっ!居ない!?新入生だと思うけど……』
また会えるのか?会いたい。
「まぁまた見かけたら教えてちょ?」
『あぁ』
「それよりクラス行かないか?違うクラスだけど」
残念そうに言う椿。
『違うのか。まぁ友達作るのにはいいんじゃね?』

