「・・・ちゅーも久々っ」



離してから、そう言って笑う。

彼女が俺を誘っているのは、明らかだった。

来るもの拒まず、行くもの追わず。
俺のモットーだ。


辺りを見回す。人はいない。
俺は、彼女の細い腰に、右手を移した。


紺色のスカートが短い。
風でも吹けば、パンツが見えるんじゃないかってくらいに。


そこにちょっと萌えたのは、俺が、軽いからじゃない。

男の性だ。
うん、男の性。


彼女を壁におしあてて。
左手で、ラインの綺麗な顎をつかみ、上にあげる。


彼女がふふっと笑って。
俺もつられて笑った。

それから、キスをしようとして。

顔を、近づける。







「廊下で発情してんじゃねぇよ。万年発情期か、てめぇは」


聞き慣れた声がして。
キスする前に、そちらを見た。


「そーたろー」


俺は笑って、左手を降る。

短く揃えられた黒髪。
鋭い視線の彼は、俺をキッと睨んだままだ。



「俺は"そーたろー"じゃねぇ。"蒼太朗"だ」

「何よ、蒼太。
あたし達の時間を邪魔する気??」




キスを止められて、リカは少し不機嫌そうだった。

けど、その何倍も不機嫌そうな蒼太朗は、眉間に深いシワをつくったまま言う。