「ちょっと!」 私はそれ以外言えない。 この腕を振り払うことなんてたやすい。 …だけど。 楓から伝わる尋常じゃない震えが私をそうさせない。 楓はやっぱり、女の人に触れるのが怖いんだ。 なんだか改めて思った。 私なら平気だって言ったけど、この震えは平気とは思えない。 そうまでして私を連れて行こうとしている。 それが、私を完璧に拒否することを許さなかった。 「楓。手を離して。着いていくから。」 私から他人を思いやった言葉が出たことに、自分で少し驚いた。