「お前っ…!

ドア壊してんじゃねぇよっ!!」




ツッこむ所はそこなのか、などと思いながら、その声の方を見る。


そこには赤茶の髪をしたスーツ姿の男。



部屋の奥にはソファが置いてあり、そこに何人か座っている。


……あ、弘夜がいる。

弘夜は下を向いてこちらを見てはいなかった。



「ああん?ドアぐらいいいじゃねぇか!

さっさと弘夜を返せよ!!」


李玖はぎゃーぎゃーと相手に突っ掛かる。


その相手も同じように怒鳴る。


…らちがあかない。




「だからっ…「弘夜、迎えに来た。」


珍しい…

結都が喋った。



「ゆ…結都さぁん……」


弘夜がやっと顔を上げ、その目に涙を溜める。



「こっち来い、弘夜。」


依然として冷たい目をした蓮士。


でもその声は人を落ち着かせる、思いやりに溢れたもの。