私が車から出るのを留まっていると…
「侑希ちゃん、蓮が来た」
嘉が言って、目の前のドアが開いた。
「侑希、」
「分かってるわ…」
蓮士が急かすように言ったから、私はそそくさと降りる。
「どこに行くの?」
「鳳狼の幹部の所だ。」
「…私、行っていいわけ?」
「……堂々と歩いとけ。」
つまり、行っていいってことなんだろう。
それにしても今日は蓮士の雰囲気が違う。
銀色の綺麗な髪
整った顔
長身に、程よくついた筋肉
それらはいつもとなんら変わりないのに、―――目だけが違う。
あの、射るような何でも見透かしてしまうような目じゃない。
…どこかで見た。
冷たい冷たい――氷を含んだかのような目。
「マスター……」
私は誰にも聞こえないくらいの声で呟いた。
――その目は、マスターの目……



