「ねぇ、車で来れないの?」




バイクで風を切りながら私は聞いた。

聞こえるかしら…?



「免許ねぇんだよ!」

「じゃあ送ってもらえばいいじゃない!」

「………」




返事は返って来なかった。


もう………

ほんと、蓮士って掴めない。




それからしばらくして城に着いた。


私はヘルメットを外し、スタスタと歩きだす。



「ちわー、侑希さん!」

「こんちわっス!」



私はそれらの挨拶に微笑み返し、でも立ち止まることなく歩いた。




私は一人、エレベーターの前で立ち止まる。

すると蓮士が来てボタンを押した。




「ボタンくらい押しとけよな…」


チラッと目線だけをこっちに向けて言う。



「…嫌いなんだもの。」




私はそれだけ答えてエレベーターに乗り、目をつぶった。