「ごめんね…急に……」
楓はそう言ってすぐに電話を切ってしまおうかと思った。
でも。
エリカの声がそれを止めた。
〔良かった…楓の声が聞けて…〕
どういうことだろう。
エリカの声はひどく安心したようで。
とても儚く感じられる。
〔あたし…楓に謝りたかった…。
ごめん…ごめんね、楓……。〕
どうして、今更。
〔いっぱい傷つけたよね…ごめん…っ〕
電話口の向こうで、エリカが泣いているのが分かった。
〔楓…大好きだよ。あたしには楓が必要だった。それはこれからもきっと変わらないから…。〕
ギュッ…と胸が締め付けられる。
あのとき、出ていけと言ったエリカ。
忘れるなんて、出来るわけがない。
二人で過ごした幸せな時間。



