華〜ハナ〜Ⅰ【完結】




「ごめんね…急に……」


楓はそう言ってすぐに電話を切ってしまおうかと思った。



でも。

エリカの声がそれを止めた。



〔良かった…楓の声が聞けて…〕




どういうことだろう。


エリカの声はひどく安心したようで。

とても儚く感じられる。




〔あたし…楓に謝りたかった…。

ごめん…ごめんね、楓……。〕




どうして、今更。



〔いっぱい傷つけたよね…ごめん…っ〕




電話口の向こうで、エリカが泣いているのが分かった。





〔楓…大好きだよ。あたしには楓が必要だった。それはこれからもきっと変わらないから…。〕



ギュッ…と胸が締め付けられる。



あのとき、出ていけと言ったエリカ。



忘れるなんて、出来るわけがない。

二人で過ごした幸せな時間。