そんな、ある日。 中二も終わりかけの、寒い冬のある日だった。 楓はいつものように、蓮と自分の分の朝食を作っていた。 カランッ 「あっ……」 手から玉杓子が滑り落ち、それを拾おうと屈む。 “……かえで………” ふと、誰かに呼ばれた気がした。 なんとなく女の人の声のような気がして、柄にもなく心臓がバクバクと音を立てた。 楓は周りに誰も居ないことを確認し、気のせいだと思うことにした。 そんなはずはない、と自分に言い聞かせた。