華〜ハナ〜Ⅰ【完結】



「んじゃあここで待ってろ。

いいって言うまで来んなよ?」




蓮がそう言ったのは、レンガ造りの大きな一軒家の門の前だった。



いくつかの窓から明かりがこぼれている。





ギィ…


蓮が門を開け、中に入っていく。



すると中から声が聞こえた。





「はっ!やっとお帰りかい?」


馬鹿にしたような、女の声。



それは蓮に向けて言っているんだろう。


バシッ



何かをたたき付ける音が聞こえて、再び女の声。



「それが今日の分だとさ。

あんたその歳で全てやり切るつもりかい?」



何の話なのかは楓には分からない。



でも一度も蓮の声が聞こえないのが楓の不安を掻き立てた。