「んじゃあここで待ってろ。
いいって言うまで来んなよ?」
蓮がそう言ったのは、レンガ造りの大きな一軒家の門の前だった。
いくつかの窓から明かりがこぼれている。
ギィ…
蓮が門を開け、中に入っていく。
すると中から声が聞こえた。
「はっ!やっとお帰りかい?」
馬鹿にしたような、女の声。
それは蓮に向けて言っているんだろう。
バシッ
何かをたたき付ける音が聞こえて、再び女の声。
「それが今日の分だとさ。
あんたその歳で全てやり切るつもりかい?」
何の話なのかは楓には分からない。
でも一度も蓮の声が聞こえないのが楓の不安を掻き立てた。



