「俺は蓮士…。レンって呼んでくれ。」
「蓮…。」
楓はどうしてレンジをレンと呼ばなければいけないのかは分からなかったが、蓮の声が頼りなく聞こえたので何も聞かなかった。
「俺は楓だよ。楓でいい。」
そういうと蓮は笑った。
「もう10時だ…。
楓は家に帰れよ。」
サラッと言った蓮。
楓はギュッと心臓を掴まれたような気がした。
「…楓?どうした?」
上から蓮の声が降ってくる。
「……ない。」
「は?」
「帰る家なんてないよ。」
震える声で、そう言った。
言葉にすると余計に現実なんだと思い知らされる気がした。



