「あたしたちのお父さんは、浮気してあたしたち家族を捨てたんです。
楓はまだ生まれたばかりだったのに…
お母さんも、最初は一生懸命働いてあたしたちを育ててくれていました。
でも…楓が立ち上がって、話せるようになったころから…楓はお父さんに似てきたんです。それはもう、そっくりに…。」
楓に視線を向けながら辛そうに話す花織。
それでもエリカはこの話を聞かなければいけないと思った。
「お母さんは、自分を捨てたお父さんを恨んでました。
だから…そのお父さんにそっくりな楓を嫌ったんです。
それで虐待してしまって……」
花織の目からは一粒の涙が零れた。
「楓を可哀相だと思ってました…っ!
でも……っ……
お母さんの気持ちも分かって……っ…
だってお母さんはお父さんのことが大好きだったからっ……」
花織は大粒の涙を流しはじめた。
たった12歳のこの女の子はどんな葛藤の中で生きているんだろう…
エリカは泣きじゃくる花織を見てそう思った。
そしてなおも、花織は、話を続けた。



