ピンポーン アパートの、一つの部屋のボタンを押す。 ここに来て、楓の震えは尋常じゃなかった。 エリカと繋いでいるその手にはギュッと力が入っている。 「………誰だ?」 低めの、疲れた女の声がした。 それを聞いて楓の震えはますますひどくなる。 「道成というものです。今日は少々お話がありまして。 もしよろしかったら上げていただけませんか?」 エリカの、柔らかく話す声が女に向けられた。 「なんだい?話って……」 ガチャッいう音とともに開いたドアからは、楓が恐れている女の顔がのぞいた。