「そっか…



楓、一回家に帰りな?」




楓はエリカが発した言葉に落胆した。

エリカが自分を隠してくれるかと思っていたのだ。


でも、エリカは帰れと言った。



「なんで…そんなこと言うんだよ……」



楓が振り絞った声は、震えていた。




「お母さん心配してるかもしれない。
あたしもついていくから。」



楓の目にはうっすらと涙が浮かぶ。



「行きたくない。行かない。」



首をブンブンと振りながら言う楓。


エリカは辛そうに楓を見る。



エリカにはエリカの記憶があったのだ。



楓は何も、知らなかった。