だいたい塵界の人間を私が知ってる訳がない。
陽の当たるに身を置くなんて、ものごころをついてから初めて。
……そんな私が、ただの人間を知っている訳がない。
「…知らないわね。貴方のことなんて見たことも聞いたこともないわ。」
「へぇ…。君、この辺の子じゃないの?」
「……ええ。」
男はフッと笑った。
「俺の事知らないなんてね。驚いたよ。名前を教えて?俺の名前は新倉嘉‐ニイクラヒロ‐。」
「…栗栖侑希よ。」
ニコニコと笑っている新倉という男。
胡散臭い、しゃくに障るそれ。
「侑希ちゃんか。よろしくね。」
ああ…また。
私をそれはいらつかせる。
「侑希ちゃん?どうかした?」
まさか、私の感情が顔に出たのだろうか。
そんな訳はない…。
そうは思うけれど、私には苛立ちが募った。
「笑いたくないなら笑わないで。見ていて気分が悪いわ。」



