「霄、何処へ行くつもり?」

「…………買い物…ですけど」




出掛ける支度をしてそう答えた俺にリリーは飲んでいた紅茶のカップを机に置いて立ち上がった。

っていうか、なんで敬語、俺。


「私も行くわ」






…なんで?


あぁ、外を見て回りたいのかも知れねーな。
やっぱりひいじいちゃんの生きてた時代からは色々変わってんだろうし。



いつもエアリーにするようにリリーを抱き抱える。


「レディをいきなり抱え上げるなんて、粗野な子だわね」
「俺はジェントルマンじゃねーからな」

「確かに、とても私やエアリーが気に入るようなケースを作るような繊細さがこれっぽっちも見当たらないものね」


なんとでも言え。





確かに自分の容貌は(不本意ながら親父に似て)とても人形を作る技術がありそうなほど器用には見えない。

短めに刈った黒い髪を見ても、ある程度筋肉のついたガタイを見ても、どうにもギャップがあるようだ。

まぁむろん、そんな見た目にスポーツに明け暮れてそうな青年が人形なんて持って街中歩きゃあ、変な趣味かと思われても仕方ないわけで。

ただ幸いしているのは、自分の意思で動く人形なんてものが世に出回っていないのと、人形は魂が宿った途端急激に存在感が人間のそれと限りなく近くなること。
これで周りの認識が『人形を持ち歩く青年』から『幼女と青年』に変わる。



この差は大事。多分。