誰かから話し掛けられるなんて、本当に久しぶりだった。 陸奥義彦くん。 とても優しくて、正義感の強そうな男の子だったな。 家に入ると、薄暗い部屋だけが私を迎えてくれる。 ぼやぼやした電気だけをつけると、彼から借りた傘と一緒に洗面所に向かった。 私には、友達と言えるような存在はいない。 たまに話すひとつ上の先輩はいるけど、友達なんて言ったら先輩に失礼だと思った。 傘を水で洗い流す。 水滴をタオルで拭いてから、近くの物干しに立て掛けた。