1年ゲーム

ふと気がつくと、美都は何かの鍵を握りしめている。
「よろしくね。」
そう言った美都の顔は、目は笑っていなかった。
…ホストをしている俺に、笑う気なんてサラサラないのだろうか…。



『ねぇ、これどうゆう事?』
美都は、まるで聞かれるのを分かっていたように、
言葉を用意していたように、口早に答える。
「一年間、あたしと一緒にいてもらう。あたしは弘也を落とす。それが、うちの社長のあたしへの課題。弘也はあたしを落とせばいい。」
…意味不明だ。これがオーナーの言っていたゲームなのか?
俺は…ゲームの"駒"なのか?
少しででも…久しぶりに会えたことに喜びを感じた俺に、馬鹿だって言いたいのか?
…美都…。お前は、誰だ?
"ふざけんなっ!!俺はお前の駒じゃねぇ!俺は…ずっとお前を想っていた俺はバカだって言いたいのか?"
言いたかった。悔しかった。泣きたかった。"想っていた"なんて、ホストに言われても信じられないか?…ホストだって、恋はするだろ。
今、確信した。
俺の"想っていた"は過去じゃない。
俺は"想っている"の今だ。