「胡散くさ」
完全に場の空気が伊東一色になりかけた時、列の中にその空気を嫌う者がいた。
「む!?今伊東先生を侮辱したやつは誰だ!!?」
二つの駕篭の後から徒歩で屯所前に到着した編み笠の集団の中から怒鳴り声が響いた。
屯所の門を潜ろうとする伊東に目を奪われていた隊士全員が何事かと振り返る。
「おーおーすまんなぁ。先生の挨拶に感動したあまりつい口が」
怒鳴られた人物はわざとらしく口を左手で抑え斜め上を向く。
「貴様ッ!!無礼もいいかげんにせんと……ん?…女?」
胸ぐらを掴もうとした編み笠の男の動きが止まり、まじまじと無礼者の顔を覗き込んだ。
「……女子だって?」
男の裏返る声を聞いて、門の敷居を跨いだ伊東の足が止まる。
「女やけど何か?」
男動揺とは正反対に、女・赤城楓は腕組みをして静かに告げる。
「な、なぜこんな所に女が!?刀まで差して…一体何のつもりだ!?」
「はぁ?」
「楓、この方々はこれから私たちと同じ新撰組隊士になる人たちですよ。あまり空気を悪くするとこれから「その心配はありませんよ」
楓の隣にいた沖田がこの状況を見かねて場を納めようとした時、何者かが言葉を遮った。

