「ここが新撰組の屯所ですか」
近藤から少し遅れて到着したもう一つの駕篭から落ち着き払った男にしては高めの声が聞こえた。
提灯を持って並ぶ隊士たちは一様に駕篭に注目する。
「新撰組は京で名を轟かせていると聞いていましたが、以外と小規模なのですね」
濃紺の仙台袴を捲りながらいかにも神経質そうな所作で駕篭を降りる人物。
「お初にお目にかかります。私、伊東甲子太郎と申します。新撰組の方々と共に日本国を夷狄より守るために参上いたしました。
以後お見知りおきを」
涼しげな一重の目を軽く伏せ、薄い唇から紡がれる言葉に皆息を呑んだ。
元来持って生まれた気品と一つの無駄も隙もない動作に見惚れていた。

