幕末異聞ー参ー

秋の夜道に現れた幻想的な柔らかい光の列は、主の帰りを今か今かと待ちわびていた。
長旅から帰京する局長と新しく加入する隊士とは一体どんな者たちなのか。そして何より、伊東甲子太郎とはどのような人物なのか。
隊士たちの期待は時が経つに連れ膨らんでいった。





「おぉ!!これは随分と豪華な出迎えだ!」


「「「!!」」」


道の向こうから黒い人集りを引き連れた影から聞こえた聞き覚えのある懐かしい声に、隊士たちは一斉に顔を向けた。


「歳のやつ、こんな豪華な出迎えせずともよかったのになぁ。皆、出迎えご苦労!ありがとうな!!」


集団の先頭を進む立派な駕篭からひょこりと厳つい顔を覗かせた新撰組局長・近藤勇は道に整列する隊士たちに笑顔で礼を述べた。


「近藤さん、それじゃ局長の威厳がなさすぎだ。もっと堂々としてくれ」

八木邸の門前にゆっくりと下ろされた駕篭に向けて、土方は早速小言を言う。

「なんだ歳!再会の喜びの前に説教か?少し寂しいな。わはははは」

駕篭から降りた近藤は、京を離れる以前と寸分違わない笑顔を見せた。
そんな近藤の姿に土方は表面では苦い顔をしつつも、内面ではほっとしていた。

「近藤さん、此度の長旅ご苦労様でした」


「山南!元気だったか!?お前こそ、局長代理ご苦労だったな!
そうだ!江戸で旨い酒を手に入れたんだ。今夜一杯やろう!」


山南の肩を叩きながら近藤はお猪口を傾ける動作をしてにやりと笑った。


「近藤さん、酒の話は後だ。今はそれより大事なことがあるだろう?」


呆れ顔の土方が今さっき近藤が来た光の道を振り返った。