「君も藤堂君の話を聞いていきなさい」

「…え!?は…はい!はい!!」

伊東からの願ってもない提案に勢い余って二つ返事をする篠原。
その瞳は少年のように輝いていた。

「ここにいる篠原泰之進君は君に会えるのを楽しみにしていたんだよ」

二人から少し距離を置いて着座した篠原に伊東は穏やかな笑顔を向ける。

「え?僕に…ですか?」


「い…伊東先生!それは…」


「はは。いいじゃないか。私も、京で活躍する同門の者に会いたいと思っていたんだ。同じ北辰一刀流を会得した者として君を誇りに思うよ」


「…いや、そんな言葉僕には勿体ないです。修めたと言っても所詮目録までですし」

「段なんて関係ないよ。北辰一刀流の免許皆伝者だからと言って、実際に刀を持って戦える者が果たして何人いるか…。技術だけでは国は守れない。君のように度胸がなくては」


「…伊東先生」

惜し気もなく賛辞を述べる伊東の姿に、藤堂の中の何かが動いた。


「伊東先生!!是非…是非我ら新撰組と共に不逞浪士の脅威から国を守ってください!お願いします!」


――この人とならば国をより良くしていける


理屈ではない、何の根拠もない第六感が藤堂を動かした。

急な藤堂の申し出に、篠原は目を見開いて驚いていたが、伊東は藤堂の熱い眼差しを正面から受けとめていた。