「診断は合っていたし、対応も適切だった。大分医者業も板についてきたようだね」

俺と良順先生以外いなくなった部屋で、良順先生は茶を持ってきた俺に笑いかけた。

「いいえ。まだまだ解らないことだらけです…」


「謙虚なことはいいことだ。きっといい隊医になるよ」

他の誰でもない、師である良順先生に誉められたのは何よりも嬉しい。俺はまた下手くそな笑顔を見せた。


「…前から聞きたかったんだが、君はなぜ私の下で医学を学ぼうと思ったんだい?
わざわざ君が監察と両立しなくても医者なんていくらでも雇えるだろうに」

そう、良順先生の言うとおり、忙殺されそうなくらい忙しい監察方の仕事の合間を縫って俺が医学を学ぶ必要などないのだ。
でも、俺は隊医になりたいと誰かの命令ではなく、自ら思った。