――九月五日


「近藤さんの甲斐性なしーー!!」

山に囲まれた盆地の京都では、江戸よりも更に厳しい夏の暑さが続いていた。
誰もが暑さで言葉を発するのも億劫だと思っている中、壬生の新撰組屯所には例外がいた。


「何で私は連れてってくれなかったんですか!?」

暑さ凌ぎのために水を溜めた桶の中で足をばたつかせる男は頬をフグのように膨らませている。

「さーなー」

男の隣で上半身裸の巨漢が生返事を返す。

「永倉さんと武田さんは連れてったのに…私はー「うるせぇな!!余計暑くなるだろうが!」

不満を吐き続ける男に痺れを切らせた巨漢がバンと床板を叩いた。

「だって原田さ~ん」

「だってもクソもねぇ!男ならうじうじ言うな総司!」

原田に叱られしゅんとなったのは、この日非番の沖田であった。



「何や?でっかいガキでもおるんか?」

「おぉ!!楓丁度いい所に「断る」


沖田と原田が座る縁側に現れたのは同じく非番の楓。
まだほとんど何も言っていない原田の言葉を切る。


「まだ何も言ってねぇだろ!!」

沖田に愚痴を聞かされ続け、楓に話を聞いてもらえない原田は遂に立ち上がり怒りを顕にした。