「…意外すぎて気持ちわりぃ」

火の着いていない煙管を口から離した土方は口元だけで笑う。

「常のテメーを見ている奴らは、冷徹で甲斐性なし。血も涙もない野郎だと思ってるだろうよ。
それがどうだ?芹沢…いや、お梅の時も池田屋の時もそうだった。
誰よりも熱くなりやがる」


土方の瞳に興味の光が宿る。

「ふん。随分と印象が悪いようで嬉しいわ」

土方の挑発的な物言いを素直に受け取る楓。どうやら、周りからの印象については自負しているようだ。

「世間の目ってのは、なかなかに鋭いもんや。強ち間違っとらん」

楓はそう続けると、左膝を立て、頬杖をつく。
何か引っ掛かる楓の言葉に土方は直ちに口を開いた。

「中身も印象通りだと?」

「大体はな」

「大体?」

均等な拍子で進んでいた問答が突然途切れた。
楓は顎を乗せていた手を唇に当て、行灯を横目で睨む。


「…なんやろな。自分では過去も今も変わっとらんと思う。せやけど、最近の自分の行動は自分でもよう理解できん。意志とは関係なしに勝手に動いとる」

本当に困っている楓の顔を土方と山南は凝視した。