「お前に助言されるなんて屈辱以外の何ものでもない」

「助言の使い方違ないか?」

「土方君。今回ばかりはきちんと礼をいうべきだよ」

広間での宴が最高潮に達している頃、薄暗い副長室の障子には大小まちまちな三つの影が映し出されていた。

「山南さん、こいつは取り引きをしたんだ。礼をする必要なんてねぇ」

煙管の吸い口を噛りながら貧乏ゆすりをして見るからに不機嫌そうな土方が低く呟く。

「アホ。こんな利益にならん取り引きしたうちの心の広さに礼を言え」

自分より身分が高いものに対して腕組みと胡坐という不躾な格好で鼻を鳴らすのは、赤城楓であった。

「それに、この取り引きが成立したいう証が欲しい。礼を言えゆうんはそういう意味でや」

楓の無礼な振る舞いに怒るでもなく、土方の隣に正座する山南は目を閉じた。

「永倉君たちの建白書の情報を私たちに教える代わりに、和解できなかった場合除隊以上の処罰を与えない。和解できた場合は無罪放免にする…だったかな?」


「その通り」

微笑む山南に、片頬だけ上げて笑う楓。
これが、楓が土方たちに出した取り引きの“条件”だった。