「あー…もうめんどくさくなった。ちゃんとこいつら運び出しとけよ!」


ガリガリと苛立ちと呆れを顕にして楓に背を向ける左之助。

「平助にでも運ばせときゃええやろ。それよりチャンバラやろうや」

軽い調子で広い背中に話し掛ける楓は至極楽しそうである。しかし、そんな楓を振り返った左之助の表情は怒るでも笑うでもなく、困っていた。

「お前何言ってんだ?!平助はこの前江戸に発っただろう?」

「は?そうだっけか?」

「お前は鳥か!?そんくらい覚えとけよ!」

「あいつの影が薄いのが悪い」

あくまでも自分の非を認めない楓に、左之助は肩を落とした。


(平助よ。こいつの記憶からお前の名前が消える前に帰って来い)


目の前で呑気にあくびをしている女・赤城楓を前に十番隊組長・原田左之助は、遠い地へ旅立った七番隊組長・藤堂平助に向けて念じていた。