「近藤局長なんて夜中帰ってきてすぐでしたね。何か裏があるのでしょうか?」

人一倍感覚の鋭さを要求される監察方ならではの慎重さで島田魁が呟いた。

「裏があろうがなかろうが関係ない」

紋付の羽織に、灰色の平袴を身につけた永倉が懐から長方形に折られた書状を取り出す。

「もう一度だけ聞く。本当にいいのか?」

永倉に問われ、畳に置かれた書状に視線が集まる。

「無論だ」

永倉と同じく正装をした斎藤が短く返事をした。

「くどい男は女に嫌われるぜ?新八」

「局長に自覚を持って頂くにはこれしかないでしょう」

斎藤に続き原田、島田が気持ちに変わりないことを主張した。

「うん。左之と島田君の意思は必ず俺と斎藤が伝えて来る」

永倉は口を一文字に引き締め、畳の上の書状を懐に収めた。



「行くか」

育ちの良さを感じさせる所作で永倉が静かに立ち上がる。

「うむ」

永倉に促されて、斎藤も起立した。

「頼んだぜ!」

下から、黒谷へ向かう二人を見上げた原田と島田は健闘を祈りながら見送った。