ー―八月三十日


この日、新撰組発足以来、稀に見る出来事が起きていた。近藤、山南と土方が三人揃って屯所を留守にしていたのだ。偶然と言うにはあまりにも不気味過ぎる。
奇しくも、これが局長という立場の近藤が増長している確固たる証拠となってしまった。

三人は昨日の夜より屯所から姿を消していたのだ。


「久々に三人で飲み明かしてるんじゃないですか?近藤さんと山南さん、どこかの道で潰れてなきゃいいですけど…」


近藤の事になると盲目になる沖田は、呑気に笑う。

しかし、ある男たちの反応は違った。

「この緊張状態が続く中で幹部全員が上からの呼び出し以外で屯所を空けるなんておかしいだろうが!!」

顔を紅潮させた原田が井戸の桶を乱暴に投げた。
彼の怒りは既に、近藤に向けてだけでは納まりきらなくなっていた。