――四月 薩摩藩邸




「ぬおおぉぉ!!」




桜も散り際にさしかかった四月の夜。

京都・伏見の薩摩藩邸に妙な奇声が轟いた。




「西郷さん!まっこと久しぶりじゃのー!無事でなによりぜよ!!」



「坂本どんこそ何もお変わりなさそうで安心しもすた」



実に半年振りの再会に高揚する坂本龍馬と西郷隆盛だった。




「とりあえず、長州の一件。ご苦労じゃったの」



坂本は徳利を持ち、西郷のお猪口に酒を注ぎ労う。



「いんや、あれは…必要のない征伐でした」


「降参してる者らに攻撃を加えるよう幕府から指示があった時にはおいもぞっとしもした」



注がれた酒を一気に飲み下し苦い顔で過去を思い出す西郷。



「坂本どん。やはり、今の幕府は狂っとる。
おいらが何とかせんと国は滅びてしまう!」


「うんうん」



「薩摩藩に何かできることはなかですか?」




「西郷さん!!よう言ってくれた!」



パンと胡座をかいていた太股を叩き、坂本はバンっと畳を踏みつけた。



「西郷さん。わしゃ約束は必ず守る男じゃ!だからよく聞くぜよ?」




顔をずいと西郷に近づけ細い目で睨むように西郷の大きな二重の目を覗き混む。