「あ!一さん発見!!」



沖田とげんなりした楓が屯所に帰ると、丁度目の前を斎藤が横切った。



「ぬ。沖田君に赤城。どうした?」


斎藤は相変わらずなゆっくりとした喋り方で二人を交互に見比べた。



「一さん!ちょっとこれ見てくれませんか!?」



沖田は雪駄のまま屯所内に上がり込み、斎藤に大事に抱えていた菊一文字を押し付けた。




「…これは菊一文字か?」



斎藤は刀を端から端まで一瞥しただけで見事に刀の名前を言い当てた。



「さっすが一さん!!これが本物か贋作か目利きして欲しいんですよ!」


「菊一文字なんて普通の市場に出回る代物ではない。一体どこでこんなものを…」



「斎藤せんせーも興奮することあるんやな。あんたも刀馬鹿か」



若干早口になっている斎藤を見て楓は珍しそうにまじまじと覗き混む。



「私より一さんの方がずっと刀馬鹿です」



沖田がどうでもいい補足をすると、斎藤がこほんと一つ咳払いをし、平常心を取り戻すように瞑想した。




「わかった。拝見させてもらおう」



「わー!ありがとうございます!」





たった三両の菊一文字。

本物かはたまた贋作か。


全ては斎藤の目と知識に託された。