「ほ…本当に三両でいいんですか?」



「いいよ。こんな古びた店にいてもこいつも可哀想だしな」


「確かにそうだ」



最後に楓が頷いて鍛冶屋の主人を茶化す。



「お!言ってくれるね嬢ちゃん。せっかくただで刀研いでやろうと思ったのによ」



「そんなん冗談に決まっとるやん!ご主人も意地悪やなぁ」



鍛冶屋のおやじの言葉を聞いて瞬時に猫撫で声で刀を差し出す楓。まるで別人である。


「しゃーないなー。やってやるかぁ。明日取りに来いや。最高に仕上げといてやるからよ」



自信満々で楓の大太刀を受け取り、にやりとシワだらけの顔で笑った。







「…幸せそうやな」



「それはもう!!」



「甘味はええんか?」



「もうお金もないんでいいです!この子さえいれば私は何もいりません」



「…あっそ」


(気持ち悪っ)



腰に二本、胸に一本の刀を抱き締めた変人が大通りを歩いている。
正直隣は歩きたくない楓であったが、少し離れようとすると勘づかれてしまうのであまり離れられない。


結局屯所までの帰り道、人目が気になり楓には桜を見る余裕なんて全くなかった。