――元治二年(一八六五年)三月十日



僧侶達の抵抗を押しきり遂に新撰組は西本願寺に屯所を移転させた。




「おい!大砲どこやった?」


「あれ?そっちの倉庫じゃなかったかな?」


「こっちにはねーぞー」



新しい屯所にまだまだ四苦八苦する隊士たちを見ながら、自分の荷物の整理をしていた伊東は苛立っていた。


近藤の指示に従うとは言ったものの、勤王攘夷思想の西本願寺が土方の話術と金子でこんなにも簡単に敷地を明け渡してしまうなんて想定外だったのだ。



「それでも天子様を敬う者か。山南さんを見習え愚か者どもが」



と一人呟いて青空を見上げた。