「山南さん…」
沖田は突如馬を止め、じっと少し後ろを歩く山南を強い眼差しで見つめた。
「私はいつも真面目で穏やかな貴方が大好きです」
「…」
「でも、今の自分に正直すぎる貴方は羨ましくて妬ましくて…嫌いです」
労咳かもしれないと一番信用し、尊敬する人たちに言えず、騙し騙し隊務をこなす今の沖田には山南の姿は眩しすぎた。
山南は沖田の言葉の内部全てを汲み取れたわけではないが、
「大丈夫。総司ならきっといつか素直な自分を出せるときが来る。私のような形じゃなくね」
と優しく頭を撫でてやった。
「一番隊沖田。ただいま戻りました」
同日夕刻、感情のこもらない事務的な声で一言玄関口で言うと、近藤、土方、組長たちが一斉に屯所の玄関に集まった。
「………山南」
近藤が俯いている沖田の隣に立つ男を見て落胆の表情でその名を呼ぶ。
「近藤局長、皆さん、ご迷惑をおかけしました。覚悟はできています」
生々しい覚悟という言葉にそこに集まった全員が呼吸を忘れた。
今まで脱走した隊士の切腹に何度も立ち会ってきた彼らだが今回ばかりは違う。
一緒に新撰組を作ってきた山南敬助なのだ。
「…とりあえず、総長室に戻ってもらうわけにはいかねぇ」
重い沈黙を破ったのはどうにか平静を保っている土方。
「山南さんは処分が決まるまで前川邸の一室に監禁する。以上だ」
冷たい声が八木邸に響き渡る。
仲間を監禁するなどあんまりだと異議を唱えることなどできるわけなどく、沖田に連れられて前川邸へ向かう山南の背中を皆見送ることしかできなかった。

