幕末異聞ー参ー




「早く食べないと折角のお汁粉が冷めてしまうよ?」


「…」



「甘いものは総司の大好物だろ」




「……何故ですか」



「?」



「何故本気で逃げなかったんですか?!何故本気でもないのにあんな手紙残して脱走なんてしたんですか!?何故…」




沖田の汁粉の椀を持つ手が震え、今にも中味が溢れそうになる。



「そんなことして、結末がどうなるかなんて貴方が一番よく知っているはずなのに!なんで…なんでだよ!!?」



急に怒鳴り始めた沖田にお茶屋にいた客が恐怖の目を向ける。




「総司。場所を変えよう。きっと君は私を連れて帰るように命令されてきたんだろう?この続きは屯所に帰る道すがら話そう」



山南は完全に周囲が見えなくなっている沖田を手で制し、一旦落ち着かせお茶屋を出た。




「私はね、自分を貫きたかったんだ」



「自分を・・・貫く?」


大津を離れて暫く、二人は馬を引きながら京都方面にゆっくりと歩を進めていた。