刻限は正午をとっくに過ぎていた。
(山南さんの小姓が手紙を見つけたのが日の昇る前。どこかで馬を拾っていたら既に関西を抜けているかもしれない)
馬上の沖田は焦っていた。
馬も走り続けて既に疲れている。どこかで休ませなくてはならない。幸いこの辺は大津宿がある。一旦休憩をとろうと馬を駆け足から早足にさせたとき、
「おーい」
と沖田は誰かに呼ばれた気がした。
「総司!こっちだよ」
「!!?」
聞き慣れた落ち着いた声、昔から聞いていた声。
聞き間違いようがない。
できれば会いたくないと願っていたその人の声。
「……山南さん」
馬を降りた沖田は複雑な声で探し人の名前を呼ぶ。
「やあ」
なんでこんなところに、と続けたかったはずなのにこんなに間の抜けた返事をされてしまってはそんなこと聞く気にもなれなかった。
「おいで。ここのお汁粉美味しいんだ」

