瀬沼桃を問い詰めている間に、三戸は溜め息を吐きながらおかしそうに笑って、自分の車へと歩き出した。行く時には瀬沼桃を乗せた。
波の音が静かだ。中野は寒くてやり切れず、身震いする。瀬沼桃は黙って膝を抱えている。
中野は瀬沼桃の腕を掴み、ぐいと引っ張って無理に立ち上がらせた。
瀬沼桃はされるがままに立ち上がると、そのまま中野に手を引かれ、今度は中野の乗り慣れた車へと乗せられた。
辺りは閑寂な空気に包まれた。
車内はまだエンジンがかかっておらず、そのせいでやはり寒い。
「どうして三戸さんといるんだ。」
「……前から約束してたから。」
「何をだよ。」
「まだ言えません……。」
「……。付き合っているのか?」
「違う。」
ふるふると、瀬沼桃は首を横に振った。断言された事実に中野は内心ホッとする。
ふう、と溜め息を吐くように息を落ち着けると、中野は忙しなく頭を掻いた。
中野は、隣りで体を小さくさせた瀬沼桃を見る。
「全く、厄介な女だ。」
こんなに惚れちまうなんて。そんなニュアンスが含まれていたことを、瀬沼桃は知らない。

