瀬沼桃は海で何をしているのだろう。
とにかく会いに行かなければ、中野はそう思いながらアクセルを踏む。
瀬沼桃の自宅から海までは、車を走らせて小一時間かかる。
ようやく到着すると、車は堤防の側に寄せて駐車した。中野は直ぐに車内から飛び出して、堤防から浜辺に乗り出した。
「……、」
中野が身を乗り出して眺めた浜には、人の影が二つ見える。目を凝らして見ると、それはどうもあの三戸と一緒にいるらしい、瀬沼桃だった。
どうして三戸さんが……。中野は絶句した。三戸は、ついこの間瀬沼桃が自転車で転んだのを助けた、フリーターの男である。
いろいろな想像が、脳内の感情を抑える部分を刺激している。
中野は思わずズンズンと浜を横断し、膝を抱えて座っている瀬沼桃に近付いた。
「何をやっているんだ。」
「あ、先生。」
三戸が酷く驚いた顔をしている。
当人の瀬沼桃は、何でもないような面持ちで中野の方を向いていた。
「お前、学校は?」
「……。」
「黙るなよ。怒るぞ。」
「……先生もう怒ってる。」

