中野は駐車場へ向かった。気が動転している。冷や汗が背筋を凍らせた。
慌てて車を走らせ、瀬沼桃の自宅へと向かった。
中野は車を停めると中から飛び出し、玄関のインターホンを鳴らす。鳴り響くインターホンは無常にも、家の中から瀬沼桃は出てこなかった。
「……くそっ。」
時刻を確認しようとして、中野は携帯電話を取り出した。すると、着信があった様子である。慌てて相手を確認すると、瀬沼桃だった。
中野は直ぐさま折り返して電話を掛けた。呼び出し音がもどかしくて堪らない。
間もなく、瀬沼桃が出た。
「……はい。」
「お前っ、今どこにいるんだ!」
「え、」
凄い剣幕である。瀬沼桃は、わけが解らず言葉を濁している。
「いいから、今どこにいるんだ!」
「……海に、います。」
「海?」
刹那、言葉を失った。
こんなに寒い真冬に、誰が好んで海へ行くのだろう。そんな、どうでも良いことを考えていた。
どこの海かを聞き出すと、中野は再び車を発進させた。

