未提出課題

 

酒屋から10分程歩くと、竹永の自宅に到着した。時刻は午後10時を過ぎている。
ゆかしい引き戸からは橙色の灯が漏れ、何とも風情がある。
 

 
「おーい、帰ったぞ。」
 

「お邪魔します。」
 

 
俺が大黒柱だぞ、とでも言うように、竹永が声をあげた。中野は慌ててその後ろについて行く。
 

暫くして、暗い廊下の奥から、竹永の娘の由香里が出てきた。
中野は頭を下げた。
 

 
「あらあら、父さん。顔が真っ赤だわ。中野さんもどうぞ上がって下さい。」
 

「あの、今日は僕、もうこれで、」
 

 
明日も仕事があるので、と丁重に断り、それを聞いて不満そうな竹永を由香里がおかしそうに見ていた。
 

 
「そうか、それじゃあ今度は休みの日にでも誘うよ。今日はありがとうな。」
 

 
最後に竹永はハキハキと、酔っているとは思えない程明確に話した。
中野も頷いて、側では由香里が車の鍵を持ち出している。やはり、わざわざ送って行くらしい。
 

 
「すみません、ありがとうございます。」
 

 
由香里は目尻に皺を作って、首を横に振っていた。