「まあ、好きな女ができたら逃さないことだな。俺は逃さなかったから、嫁さんとずっと、仲良しだ。」
ははは、と愉快に笑う竹永は、格好良い。中野は見とれてしまった。
そろそろ中年太りかと思うような体型に、増えてゆく白髪、しかし男らしい視線に、中野の憧れは変わらない。
「早く先生みたいになりたいです……。」
「こんなオジサンになりたいのか?相変わらず変な野郎だ。」
酔いのせいで足元が覚束ず、フラフラとしている竹永の後ろを中野は歩く。
少々寒いが、男二人が夜風に吹かれて酔いを醒まそうとする。
「俺の家に着いたら、娘にお前の家まで送らせるからな。」
「えっ、大丈夫ですよっ。」
「いいんだよ。大人しく送られろ。」
竹永は随分と愉快らしい。
中野は、全く強引な男だと思いながら、恩師であり父親である顔を立てて、素直に言う事を聞いておこうと思った。

