運転中、それは酷いものだった。
中野の脳内は、瀬沼桃が初めて見せた不可解な行動のせいで、混乱している。
悶々とするなか、どうにか、竹永の自宅の近くにある酒屋へ辿り着いた。
「先生。」
酒屋のなかに竹永の姿を見つけると、中野は足早に近寄って腰をかけた。
竹永はカウンターに腰を落ち着けている。藍色の厚いセーターが、少し紅潮した頬によく映える。
「おお、なんだか悪いな。こんなに急な誘いでよ。」
「そんな、平気ですよ。」
「まさか教え子が教職に就いて、更にはこうして酒を飲むことになろうとはなあ。嬉しいぞ。」
優しげなその眼と、知らぬ間に増えた白髪が哀愁を帯びている。
キャリアや年齢は全くかけ離れているが、互いに教師という職業に携わっているので、様々な教育の話をした。
竹永はアルコールが入ると、普段よりも更におしゃべりになるようだ。
先程から口の動きが止まらない。
「そう言えば、お前は今年でいくつになるんだっけ。」
「今年で二十六です。」
「そうか、俺と二回りもそれ以上も離れているのか。結婚はまだか?」

