未提出課題

 

「あ、そうだ。瀬沼。」
 

 
中野は、瀬沼桃が家に入ろうとしているのを止めた。運転席から助手席側の窓へと乗り出し、開いた窓から顔を覗かせる。
瀬沼桃は不思議そうに首を傾げ、こちらを向いていた。
 

 
「俺の携帯の番号、教えておくよ。今日みたいに連絡先を学校にされると、なんだか怪しいだろう?」
 

「あ、はい。」
 

 
ちょっと待って下さい、と言うと、瀬沼桃は一度家に入り、荷物を玄関に置いてからまた出てきた。
瀬沼桃は、制服のポケットから携帯電話を取り出した。それを、差し出されていた中野の手のひらに乗せる。
 

 
「何かあったら、連絡しろ。」
 

「……はい。」
 

 
中野が瀬沼桃の携帯電話に番号を打ち込んでいる間、瀬沼桃はじっと黙ってそれを見ていた。
 

二つのディスプレイと睨めっこしながら、中野は自身の行動に歯止めが利かなくなっていることに気が付いた。
瀬沼桃は黙ったままだが、自分のことを変に思ってはいないだろうか。
 

教師と生徒の間には、やはり抵抗摩擦のようなものがある。