未提出課題

 

「それ、」
 

 
途切れた言葉に、瀬沼桃は首を傾げた。慌てて取り繕うように、中野は言う。
 

 
「それが用事の正体か?」
 

「あ、そうです。」
 

 
瀬沼桃の膝に置かれた袋を指差した。瀬沼桃は納得したように頷く。
 

 
「毎日自転車で登校してるのか?」
 

「普段はバスです。一度家に帰ってからそのまま自転車で、スーパーに……。今日は2週間に一度の特売日なので。」
 

 
淡々と、しかし嬉しそうに瀬沼桃は話す。
 

 
「今日はよく話すな。」
 

「そんなことないですよ。」
 

「……時々笑うし。」
 

「……。」
 

 
その方が良いよ。
中野がそう言ってしまうことは容易なことだったが、理性はやはり、悪魔でも自身が教師であることを証明した。
 

 
「自転車は後ろに乗せるから。」
 

 
そう言うと、中野は後部座席に自転車を積み込んだ。どうにか、自転車は窮屈そうに収まった。
 

 
「ありがとうございます。」
 

「ああ。」
 

 
それから間もなく、二人が乗った車が発進した。