「ちょっと待ってくれ。
それじゃあ、なんでアンタはそのことを知っているんだ」









「保管される者と保管を管理する者、我々は管理する立場の人間だ。
計画は順調だった。しかし、欠点が一つだけあった。それはメモリーだ」











「さっき言ってた、容量の大きいものか」











「その通り。
物質名:ポール。あのメモリーは使い続けなければ、データが消えるものなんだ」











「そんなものを使う意味がわからない。
メモリーは保管するものだろ。
使い続ける意味がない」








「あれ以上の場所を取らないものはなかったとしか説明できない。
何億人もの人々を保管させる場所、我々管理者の場所、食糧、さらに保管装置。
場所には限りがあった。
そのために、そのメモリーを使ったんだ」












「その結果がこの世界の誕生ってわけか」












「そうだ。
当時、流行したバーチャルソフトを基準に保管装置が造られた。
そして、我々は人類を保管することに成功した」












「立派な仕事をしたんだな…」














「ありがとう。このバーチャルソフトには一つ特典が付いていてね。
その世界では人々に『能力』があるというものだ。
我々が用意した世界…ここでは『仮想世界』と言わせてもらうが、人々に暮らしやすい環境を提供する。
我々、管理側にとってはエネルギーシステムを人に造ってもらう特典があったんだ」















「整理すると…管理側にとっては人を一つのエネルギー発生装置とするわけか」














「そのとおりだよ、ユキ君。
人々の暮らしにはエネルギーが必要だ。
ただ、エネルギーにも限りがある。
例えば、百年までしかないエネルギー資源が百年後にも継続する現状があったとしたらどう思う」